ビオトープ管理士 資格取得のための通信講座    
ビオトープ管理士のためのビオトープ管理者養成通信講座 人と自然の研究所



ビオトープ実践フィールド講座・実習・セミナー 実施報告


水生生物調査実習
プロ講座受講生を対象としたフィールド実習を開催

 11月25日・26日、長野県黒姫のアファンの森において水生生物調査の実習を行いました。この実習は(財)C.W.ニコル アファンの森財団の、アファンの森における水生生物調査を兼ねており、調査実習の結果がそのまま報告書という形で提出されるという実践的なものです。
 今年9月にスタートした「ビオトープ管理プロ養成実践講座」の受講生がこれまで学んできた調査法や報告書作成などのプログラムを実践する、またとない機会になりました。

        
天気にも恵まれ、冬枯れのアファンの森はとてもきれいでした。



        
調査の方法と注意事項などを確認してから、調査地点に移動。



        
調査開始。3つの調査区を設定し3班に分かれて水生生物採集を行いました。


        
採集物は持ち帰ってソーティング(分類)を行い、同定をします。



        
深夜までかかって同定を行った結果、トビケラ、カゲロウ、ヤゴ、ゲンゴロウや
コオイムシなどたくさんの生物を確認・同定することができました。
写真は(左)ゴマフトビケラ属幼虫、(右)ルリボシヤンマ幼虫です。


        
26日は朝から鳥居川で調査を行いました。アファンの森とは
環境の異なる水域で、生物相の違いを見てみました。



        
ここでもカワゲラ、トビケラ、ヤゴ、イワナなどなど、たくさんの生物を確認でき、
やはり、環境が変わると生物相も違ってくることがわかりました。
同じ科の生物でも流水を好む種が多く確認できました。写真は(左)カジカ、(右)ヘビトンボ幼虫です。



今回確認した生物の多くは都会ではなかなか見ることのできないものだったので、受講生はとても勉強になったのではないでしょうか。また、実際の調査を兼ねた実習ということで、より実践的な良い経験ができたと思います。また一歩、プロのビオトープ管理士に近づきましたね。



【ビオトープ現場研修会第16弾】
第3回ビオトープ実践フィールド講座 実施報告
−C.W.ニコル・アファンの森−
森を再生するために必要なことを学ぶ

2006年5月13日(土)・14日(日)、財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団の協力のもと、
長野県黒姫において第3回ビオトープ実践フィールド講座を開催しました。
プログラム
1日目◆アファンの森の視察・解説 − 午後     
     ・ビオトープの再生と生物多様性の回復を目指した森づくりの実際
     ・森林構造、土壌と植生の違いなど

    ◆森の解説と植生調査(2日目)の概要説明等 − 夜
     ・1日の解説と植生調査の説明
     ・アファンの森の概要説明
     ・意見交換、懇親会 
2日目◆植生調査の実習 − 午前
     ・林相調査実習
     ・実習の解説
    ◆まとめとディスカッション− 午後
     ・「100年後の理想の森の姿」まとめ
     ・ディスカッション

アファンの森とは・・・
 日本の森をふたたび野生動物の棲める豊かな森に戻したい。そんな思いでC.W.ニコル氏は18年前、長野県の荒廃した里山を少しずつ買い、再生活動をはじめました。そして、様々な生きものが暮らせる森となりつつある今、この森を永遠の森にするためにC.W.ニコル氏はこの土地を寄附しました。この森で起きることが、日本中の森がよみがえるための一歩となることを願って、アファンの森を「財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団」の森にしました

フィールド講座スタート
 2日間雨の予報の中、講座がスタートしましたが、予報に反して集合時間にはほとんど雨も上がり、上々のスタートとなりました。

ゲストハウス前          参加者集合
東京、埼玉、神奈川、長野、新潟、大阪、福岡から黒姫駅に集まった受講生総勢15名は、車で一路アファンの森へ。森の入り口にあるゲストハウスの前に集合しました。



森の視察開始
プログラムの最初は森の視察。様々な森林環境を持つアファンの森で、森を見る目を養う「森を学ぶ」プログラムです。今回の講師は、いつもお世話になっている石川先生と、「アファンの森の守り人」森の達人松木さんです。


やぶこぎ          未管理区域
まず、まったく手入れをされていない区域から森に入っていきます。そこは藪の状態で、木の枝やツルをかき分けながら進みました。春も浅く、葉が少ないので明るいですが、もう少し葉が茂ってくると、きっと真っ暗な森になってしまいますね。


今回のフィールド講座では、森を理解するためのきっかけとして参加者の皆さんに宿題を出しました。
「ある森の管理をあなたが任されたらどんな森にしたいですか?その森の100年後の理想の姿を考えてください」というものです。



ティピ裏          自己紹介・発表
視察の途中の雑木林の中で、各自の「100年後の森の姿」を発表しました。「四季を感じられる森にしたい」「一切手を入れずに原生林にしたい」「生産性の高い森にしたい」と様々な森の姿がありました。これらが2日間の講座を通して学ぶことにより、どのように変化していくかが楽しみです。



講師陣          松木さんの解説
森の達人松木さんは、枯れ枝を見ればその枝がどのようにして枯れたかが分かってしまいます。おもむろに落ちている枝を拾って「これは3年前に枯れました。自然死です。樹種は・・・」と次から次へと読み解いてしまいます。これには受講生もびっくりでした。それだけでなく、根っこを見るだけでも樹種がわかってしまいます。松木さん曰く、「葉や花を見なくちゃ何の木か分からないようではだめ。冬には葉は落ちちゃうからね。樹皮や根を見たり・・。それから、どんな動物の役に立っているか。すべて分かっていないとだめなんだ」と。



農業用水路          ニリンソウ
視察再開。アファンの森の境界には農業用水路があり、水路脇にはニリンソウ、リュウキンカなどたくさんの花が咲いていました。水路をはさんだ反対側はスギの植林された国有林です。ほとんど管理されずに痩せて無残なスギ林が広がっており、今年の大雪のせいでしょうか、倒れている木もたくさん見られました。



土壌断面          泥炭土を検土丈で調査
アファンの森には様々なタイプの土壌があります。雑木林の下には豊かな「適潤性褐色森林土」、この森で代表的な「弱湿性黒色土」、谷間には「泥炭土」など、今回は4つのタイプの土壌断面を観察しました。土壌や水分条件などによって、そこに生育する植物相に違いが出ることが良く分かりました。



未管理地          管理された森の解説
何十年も放置された森は下草やツルがはびこり、足を踏み入れることさえ難しくなっています。二次林は放置するとこうなる、という手本のようです。それに対して、手を入れ、管理された森は木々の間隔が適度で、明るく、木ものびのび育っているようです。原生林には手をつけてはいけません。でも、一度人間が手を入れた森は、しっかり管理してあげなければならないのですね。でも、藪を好む生き物もたくさんいますので、そんな生き物のためには藪も少しは残しておいてあげなければなりません。



アファン入口付近          松木小屋
様々な環境を視察して、「森の視察」は終了です。最後に森の入り口にある通称「松木小屋」におじゃますると、松木さんがウリハダカエデの木からとった貴重なシロップを振舞ってくれました。とっても美味しかったです。



夜の講義
夜の講義          宿舎前の田園風景
夜の講義は、今日1日の解説と2日目の植生調査実習の説明、アファンの森についての説明を行いました。また、受講生には森の視察を終えて感じたことなどを発表していただき、みんなでディスカッションを行いました。講義終了後は、懇親会で意見交換をしてフィールド講座第1日目は終了です。



第2日目スタート
今日は朝からとても良い天気になりました。朝の明るい日差しを浴びながら2日目の講座スタートです。


森の中へ          豊かな森
はじめに、松木さんがアファンの森の中で一番好きだという森を見学しました。この森は、高木、亜高木、低木、草本等さまざまな植物がバランスよく生育し、理想的な森の姿をしているとのことです。



植生調査実習
20m四方の調査区を設定し、さらに縦横2mのメッシュに区切って調査を行いました。今回は調査区内に生育する高木・亜高木についての林相調査です。宿題の「ある森」とは実はこの調査区の森でした。


樹種調査          幹周測定
2人1組で調査を行いました。まず樹種を調べ、胸高(胸の高さ、約1.2m地点)の幹周を測定して調査票に記入していきます。



樹高計測          樹冠
次に樹高を測定して、最後に樹冠投影図を記入していきます。こうして調査をしてみると、木々の樹冠での光の奪い合いや、争いに敗れて枯れてしまった枝など、色々なことが見えてきます。調査以前とは森の見え方がまったく違ってきました。



午後の講座
ティピ裏の雑木林で昼食をとり、午後の講座スタートです。まとめとディスカッションを行いました。

まとめ          ある森
2日間の講座を通じて得たことを生かして、宿題で取り組んだテーマ「ある森の管理をあなたが任されたらどんな森にしたいですか?その森の100年後の理想の姿を考えてください」という課題について、あらためて考えました。



発表・ディスカッション          アファンの森
最後に、受講生1名に「理想の姿」を発表してもらい、その内容について全員で話し合いました。ここでも様々な意見が出されましたが、その内容は、よりしっかりと、明確になっていたようです。



講座終了
最後にまとめられた「森の100年後の理想の姿」は、宿題のときには漠然とした内容だったものが、より具体的で、明確なものになっていました。例えば「四季を感じられる森にしたい」というものだったのが、「高木:コナラ、ミズナラ・・、亜高木:コブシ、コハウチワカエデ・・、低木・・・」と、樹種名まで加えられるようになっていたり、また、「全体の何%を間伐し、原生状態のときに見られたであろう樹種を導入する」など。この差が2日間の講座の成果なのだと思います。


2日間お疲れ様でした。参加者の皆さんは新たな知識を身につけた反面、「知らないことがいかに多いか」ということにも気づかされたのではないでしょうか。でも、それはとても大切なことですよね。
人と自然の研究所は、今後も受講生の役に立つ講座を開催していきたいと思います。


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【ビオトープ現場研修会第8弾】
第2回ビオトープ実践フィールド講座 実施報告
−C.W.ニコル・アファンの森−
森を知るための方法を学ぶ
10月15日(土)〜16日(日)、財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団の協力のもと、
長野県黒姫周辺において2回目のビオトープ実践フィールド講座を開催しました。
プログラム
1日目◆森を知るための方法1 − 午後
     ・ビオトープの再生と生物多様性の回復を目指した森づくりの実際
     ・森林構造を学ぶ、土壌と植生の違いなど

    ◆アファンの森の概要と植生調査の概要説明、意見交換 − 夜

2日目◆森を知るための方法2 − 午前
     ・植生調査の実習   

    ◆河川環境、構造物の視察と解説 − 午後
     ・近自然工法により改修された河川の視察(鳥居川)
     ・河川構造物(砂防ダム・魚道など)の視察(関川)


アファンの森とは・・・
 日本の森をふたたび野生動物の棲める豊かな森に戻したい。そんな思いでC.W.ニコル氏は17年前、長野県の荒廃した里山を少しずつ買い、再生活動をはじめました。そして、様々な生きものが暮らせる森となりつつある今、この森を永遠の森にするためにC.W.ニコル氏はこの土地を寄附しました。この森で起きることが、日本中の森がよみがえるための一歩となることを願って、アファンの森を「財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団」の森にしました。


フィールド講座スタート
10月15日(土)午後1:30、JR黒姫駅集合。バスに乗り換え、アファンの森へ向かいました。

◆今日のプログラムは「森を知るための方法」です。アファンの森を歩きながら
  森について学びました。

アファンの森
間伐など、手を入れてよみがえった林です。
コナラなどの落葉樹林で、歩くと地面が
フカフカでした。とてもきれいですね。

ナメコ
間伐した木は、薪や炭焼き、
キノコのほだ木などに利用されます。

実生苗
この林には、コナラ、モミジ、カラマツなど
さまざまな植物の実生苗が見られます。
林床に適度な光が届く健全な林である証拠ですね。

土壌断面
この下を掘ってみると、
見事な土壌の断面が見えました。
地表近くには、適潤性黒色土という
豊かな土壌が堆積しています。
放置区域
手を入れていない区域です。手を入れた
ところとの比較をするために残してあります。
この状態だと林床に光は届きませんね。
木も太く成長することができません。

萱場
萱場(ススキ原)です。炭焼小屋の
萱葺屋根の葺き替えに利用します。
草むらに巣づくりをするウグイスなどの
棲みかにもなります。

群落断面スケッチ
群落断面スケッチの実習風景。
スケッチをすることにより、見過ごしていた
ものもしっかり見られるようになり、
森の見方が変わってきます。
森の達人 松木氏
森の達人、松木さんです。
森づくりについて、ためになる、そして
楽しい話をたくさん聞かせていただきました。
夜の講義
夜の講義は1日の解説や明日の実習内容の
説明、そしてアファンの森についてなどです。
懇親会
講義の後は、意見交換会と懇親会です。
皆さんの日頃の活動などを話して
いただきました。夜遅くまでお疲れ様でした。

2日目スタート。

◆まずは植生(毎木)調査の実習です。

幹周測量
幹の太さを測定し・・・。
調査風景
木の位置を測定して、記録していきます。
樹冠投影図の説明
つづいて、樹冠投影図作成の説明です。
樹冠を見上げています。
アファンの森の樹冠
アファンの樹冠はこんな感じです。
森の昼食
森の中での昼食。
食べ物が何倍もおいしく感じます。
メニューは長野の定番おやきでした。
葉っぱの確認
ゲームをしているのではありません。
落ち葉を集めて
「これはミズナラ、これはウリハダカエデ」
と確認しているところです。

◆午後は、河川環境の視察です。

鳥居川
近自然工法により改修された鳥居川です。
環境に配慮されていて、
あまり改修された感じはしませんね。
河川の説明
河川の構造について、また、
改修工事についての説明を聞きました。
関川の砂防ダム
関川です。こんな巨大な砂防ダムがありました。
魚道が設置されてはいますが、
きっと生物の移動を困難にしています。
上流側
ダムの上流側です。自然の流れがとてもきれい
ですね。この先には有名な苗名滝があります。
下流側
下流側は、練り石で護岸されてしまっています。
ダムを境に、上流と下流では違った
環境になってしまっています。

  河川の改修やダムの設置が生物の生活に大きなダメージを与えてしまうことは明白です。改修やダムの設置が必要か必要でないかということと同時に、環境を変えてしまうのであれば、生物にいかに影響を与えないかということをもっと考えなければなりませんね。


これで今回のフィールド講座は終了です。参加者の皆様お疲れ様でした。

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ビオトープ管理士試験直前フィールドセミナー報告
―谷戸山公園に学ぶ―


9月10日(土)、同月25日に行われる今年度のビオトープ管理士試験をひかえ、
試験直前のセミナーを、毎月の現場研修会のフィールドとしている
神奈川県立座間谷戸山公園にて開催いたしました。
このセミナーは、公園内を歩きながらビオトープ管理士試験に関連する内容を、
公園の自然をお手本に1つひとつ解説するというものです。また、過去に出題された問題を
提示するなどして、その場その場に合った項目を、目で見て理解していきます。

ビオトープ管理士試験直前フィールドセミナー スタート
試験の2週間前にもかかわらず、
たくさんの受講生が参加下さいました。
セミナーの解説、自己紹介などの後、
視察に出発です。
野鳥の原っぱへ向かう受講生
まずは野鳥の原っぱから。
ここでは、定期的な草刈りなど草地管理、
残土処理、鳥類の生息環境、
外来植物の除去等について学びました。

シラカシ観察林で解説をうける
シラカシ観察林での解説風景です。
皆さん真剣にメモを取っていますね。
森林の更新、極相林、シラカシ林を
構成する樹木などの解説です。

水鳥の池の前で解説する石川先生と受講生
水鳥の池とその脇にあるカエル沼では、
ミティゲーション、鳥類非干渉距離、鳥類の渡り区分、
カエルのビオトープなどについて解説しました。
この日、池にはカイツブリやカモなどが泳いでいました。
カワセミやオオタカも時々見られるそうです。
交流の場となっている昼食
午前のセミナー終了、里山体験館にもどり
昼食をとりました。いつもここは参加者の交流の
場となります。試験勉強の進み具合や
日頃行っている活動などについて話していました。
自然石積みの解説
午後のセミナー開始です。
園路脇の自然石積み。空隙の多い
石積みはトカゲや昆虫などの生息空間と
なっています。この他、丸太積み、カントリー
ヘッジなども生物の大切な生息空間ですね。
コナラの葉
クヌギ−コナラ観察林に落ちていたコナラの枝。
ハイイロチョッキリが切り落とした物でしょう。
よく見るとドングリには産卵をした穴があいていました。
野外教室での解説
クヌギ−コナラ観察林にある野外教室での
解説風景。ここでは、原生林・二次林、萌芽更新、
森林の階層構造、センサス調査などについて
解説を行いました。

わきみずの谷での解説
わきみずの谷での解説は、トンボ・ホタル・
ホトケドジョウなどの生息環境、湿性遷移、
地域個体群(遺伝子の多様性)等です。
この公園でも関西地方のホタルを放して
しまった人がいて、遺伝子の多様性が
失われる恐れがあるとのことです。
田んぼなど里山の風景が広がる場所での解説る
最後に、私達が毎月現場研修会を行っている
湿生生態園と田んぼで順応的管理、水生植物・
水生昆虫、湿田・乾田等について学びました。
これで全15ヶ所での視察・解説は終了です。
この後は、室内へ移動して試験問題の
解説を行います。

ビオトープ管理士資格試験へ向けての講義
公園近くの公民館で、過去に出題された
ビオトープ管理士試験の再現問題の解説と
質疑応答を行いました。
午前2時間、午後2時間30分歩いた後でしたので、
みなさんかなり疲れていたと思いますが、睡魔と
たたかいながら頑張って説明を聞いていました。


これですべて終了です。このセミナーがみなさんの学習の一助となれば幸いです。
みなさんお疲れ様でした。


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【ビオトープ現場研修会第4弾】
第1回ビオトープ実践フィールド講座

−アサザプロジェクト−
保全生態学に基づいた霞ヶ浦再生事業に学ぶ

6月18日(土)〜19日(日)、NPO法人アサザ基金の協力のもと、
茨城県霞ヶ浦周辺において1回目のビオトープ実践フィールド講座を開催しました。


プログラム

 1日目・霞ヶ浦と地域の自然再生のための「学校ビオトープ」管理作業の実習(午後) 
        タイプの異なる4ヶ所の学校ビオトープでのメンテナンス(保全)とモニタリング(調査)の実施。 
     
     ・解説&意見交換(夜) 
        アサザ基金「出前授業」(小学生向け授業)の実演。
        本日の作業の解説と質疑応答。
          講師:アサザ基金スタッフ

 2日目・霞ヶ浦再生事業の現地見学・解説(午前)
        タイプの異なる再生事業現場の見学と解説。
        工事実施後の自然再生状況の検証。
        自然のアサザ群落と再生したアサザ群落の見学。
     
     ・解説&意見交換(昼)
        霞ヶ浦再生プロジェクトの解説と質疑応答。
          講師:アサザ基金代表 飯島博氏
     
     ・霞ヶ浦再生事業の現地見学・解説および谷戸田の見学(午後)
        粗朶消波施設と再生した湖岸植生帯の見学。
        谷戸田再生地区の見学。




アサザプロジェクトとは・・・

日本で2番目に大きな湖 霞ヶ浦は、水質の汚濁や漁業の衰退、森林の減少、人口の増加などの問題を抱えている。工業化や都市化に応じた水資源の大規模な開発により、湖岸はコンクリートで固められ、水門が閉鎖されて海との連続性が絶たれ、また、森林やため池などの身近な水源が失われつつあり、流入する水質も悪化している。これまで、行政は個別の施策や事業を行ってきたが、抜本的な改善には至っていない。
 アサザプロジェクトは、このように多様な問題を抱える霞ヶ浦・北浦とその流域の広大な地域を対象とし、行政と全く異なる独自の戦略による環境保全と地域振興を展開している。
アサザプロジェクトは、湖岸植生帯の復元、放棄水田を生かした水質浄化、水源の山林の保全などを、環境教育や保全生態学の先端研究と一体化しながら流域全体で行っている。この事業は「市民型公共事業」と呼ばれており、現在までにのべ8万3千人をこえる市民、農林水産業、学校、企業、行政などの多様な主体が参加し、生物多様性の保全を通じて健全な水循環や生態系の物質循環を達成していくための新たな社会システムの構築が進められている。




フィールド講座スタート!
6月18日土曜日、電車で、バスで、集合場所であるJR潮来駅、潮来バスステーションに集合した参加者の皆さん。貸切バスに乗り換えて、「ビオトープ実践フィールド講座」のスタートです。今回の講座には、関東地方を中心に、長野や遠くは秋田、石川、京都からも参加をいただきました。


トンボ公園見学
まず最初に、潮来市のトンボ公園を見学しました。この公園はもともと国が整備した公園でしたが、風が強くあまり利用されていませんでした。その公園の一部を、市民の手でヤナギなどの木を植え、風を遮り、「トンボの生息できる」環境に作り変えたのです。現在ではアサザ、コウホネ、オニバスやカキツバタなどが咲き、たくさんのトンボが集まる公園になっています。この日は、地元の管理ボランティアグループの方々がアメリカザリガニの駆除をされていました。


バスの中も講習会
現場に向かうバスの中では、次の実習作業の概要や趣旨の説明などを行いました。移動の時間も無駄にしない、いわば移動講習会です。おかげで4つの小学校を回る強行軍も、スムーズに進行できたのではないでしょうか。


学校ビオトープ
アサザプロジェクトが中心となって、現在霞ヶ浦周辺の110の小学校において学校ビオトープを設置しており、霞ヶ浦を中心とした広域のビオトープネットワークを形成しています。これら学校ビオトープは、「霞ヶ浦の再生」を共通目標にしており、単に環境教育のための教材であるばかりでなく、アサザの育成(里親)・植付けなど霞ヶ浦再生プロジェクトの一端を担っています。


色々な種類のトンボが来られるような植生管理
まずは潮来小学校から管理作業の実習開始。ここから3校での作業は、植生管理とモニタリングです。池を埋め尽くしている植物を除去して開放した水面を作り出す作業の班と、生息している水生生物を網で採集する班に分かれて作業を行いました。

     学校ビオトープ管理作業の説明    学校ビオトープに生育していたアサザ    除去したカサスゲなどの植物 

植物は、ヨシ、ウキヤガラ、フトイ、カサスゲ、チガヤ、アサザ、デンジソウ等様々で、耳慣れない植物もたくさんありました。アサザ基金のスタッフに1つひとつ説明していただき、除去するもの、残すものを確認してから作業を行いました。地下茎の発達した植物はちょっと引っ張っただけでは抜けません。その作業1つを取っても、参加者の方は管理作業の大変さが実感できたのではないでしょうか。



     コオイムシ    羽化の準備をするヤゴ    アジアイトトンボ

水生生物は、ヤゴ、ゲンゴロウ、コオイムシ、マツモムシなど、たくさん確認でき、これもスタッフに説明をしていただきました。時には、ヤゴの種の見分け方や、ヤゴの生態と体の特徴の関係など、深いところにまで話が及び、皆さん興味深そうに真剣に聞き入っていました。普段あまり見られない昆虫類もたくさん採集できたので、とても良い勉強になりました。やっぱり、図鑑で見るのとは違いますね。一度本物を見ると、もう忘れないのではないでしょうか。

1時間弱の作業で植物に覆われていた池が、見事に復活。これぐらいの開放水面があれば、トンボも産卵に来てくれますね。

     潮来小学校の学校ビオトープで作業をする受講生1    潮来小学校の学校ビオトープで作業をする受講生2    作業後の潮来小学校ビオトープ



次の 日の出小学校では2校目ということもあって、皆さん、だいぶ作業にも慣れた感じになってきました。植物も、これは除去、これは残すといった具合に少しずつ自分で判断できるようになっていたようです。ここでは、池の周りの土手で被覆土がはげて防水シートがむき出しになっているところの補修も行いました。防水シートに穴があくと水が抜けてしまいますから、これも大事な管理作業なんです。防水シートに土をしっかりかぶせて、作業終了。
3校目は津知小学校。津知小学校の生徒のみんなと一緒に作業をしました。ここでは、これまでの作業に加え、移植の作業を行いました。池の中央部で根ごと引き抜いた植物を、岸近くに植えました。池の中央部に開放水面、周辺部に植栽という構成にすることにより、「子供が池に入らない」ようになったり、「トンボの羽化などの観察が間近に見られる」ようになるなどの効果があります。

     小学生と一緒に管理作業    抽水植物の移植作業    水生生物の説明に聞き入る受講生と小学生



「評価は生き物にしてもらう」 モニタリング実習
今日最後の延方小学校では、モニタリングの実習を行いました。とても良く管理された学校ビオトープで、以前はカワセミも巣を作っていたということです。実習は、ビオトープ内で見られる植物の種名や植被率、動物種などを1つづつ確認して、チェックシートに記入していきます。こういった作業を継続して行うことによって、「ビオトープがどういう状況にある」「どのように変化している」といった現状確認、「これからどのように管理すれば良いか」等の順応的管理の方針を立てることができるのです。ビオトープは造成後の管理が重要なんです。

     延方小学校ビオトープ    モニタリングの説明    アサザの花



ビオトープを伝えるための 「出前授業」
ホテルに戻って各自で食事を済ませた後、講習会を行いました。ここではアサザ基金で日頃から小学校などで行っている「出前授業」を実演していただきました。話しかける感じの分かりやすい言葉とストーリーで、子供達の心をぐっとつかむようなたのしい授業でした。子供達に何かを説明して、理解してもらうというのはとても難しいですよね。ビオトープ管理士としては、そのような機会が将来きっとあるでしょう。そんな時には、この「出前授業」が役に立ちますよ。
最後に、今日一日の解説と質疑応答を行い、第1日目のスケジュールは終了です。本当はこの後、参加者全員での交流・懇親を図る時間を予定していたのですが、時間が無くなってしまい、中止となってしまいました。参加者の皆さんのアンケートでも、「もっと参加者同士の交流を図りたかった。」とか「他の人の意見を聞く機会が欲しかった。」といった声が聞かれましたので、次回のフィールド講座に反映させたいと思います。

               出前授業1      出前授業2



2日目スタート
朝8:30にホテルのロビー集合、バスで今日最初の視察地へ出発しました。初日はビオトープ管理の実習を行いましたが、2日目は各地の視察です。まず最初に、麻生のアサザ自然群落を見に行きました。古来より霞ヶ浦では、アサザなどの水生植物が群落を作り、自然の波消施設の役割をはたしてきました。霞ヶ浦の東岸、麻生町には貴重なアサザ自然群落が残っています。満開の時期には一面が黄色い花に覆われて、それは美しいとのこと。鹿島鉄道では「アサザ号」なるものが走るそうです。


霞ヶ浦の自然と共生するために 「アサザ自然群落」
麻生町冨田地区の岸辺付近一面に広がるアサザ群落を見ることができました。ちょうど開花時期に入るところで、ちらほらと黄色い、きれいな花を咲かせ始めていました。また、湖岸に一部残る波打ち際のヨシ原には、今年発芽したばかりのアサザの新芽がいくつか見ることができました。これは前夜の「出前授業」でも説明していただいたことなのですが、アサザの種子は岸辺に流れ着いて、翌年にその水際で発芽するとのこと。説明を受けたとおりのことが目の前で実証されており、参加者の皆さんも「なるほど」と納得の表情。でも、コンクリート護岸されたり、強制的な水位調整など環境を変えてしまうと発芽できないのです。つまり、アサザには自然の水辺の「エコトーン」が守られていなければいけないということですね。この冨田地区でも、湖岸はコンクリートで護岸されていましたので、今後この群落が現在のまま生き残っていけるかが心配です。

     コンクリート護岸された場所の見学    わずかな水辺のエコトーンで発芽したアサザ    アサザ群落



波を消すことだけを考えた 「石積み消波施設」
同じ麻生町の島並地区には石積み消波施設が設置されており、これは砂浜など湖岸の保護を目的として巨費を投じて設置された施設です。しかし、実際は、設置されている施設と施設の間から砂浜の砂が吸い出されてしまったり、施設の内側で水がよどんでしまって、湖底がヘドロで覆われてしまったりしているのが現実です。
近所のお年寄りは、「ここいらには魚はいないよ」とおっしゃっていました。自然環境に目を向けず、人間の都合だけで工事を行ってしまうと、このような結果を招いてしまう典型的な例ではないでしょうか。

     石積み消波施設1    石積み消波施設2    石積み消波施設の解説



波消しと魚のすみか、そして浜をつくる 「粗朶消波施設」
玉造町の浜地区では、アサザプロジェクトが中心となって設置した粗朶消波施設を見学しました。粗朶とはご存知のとおり、ナラやヤナギといった主に広葉樹の枝を束ねた物です。丸太を組んだ中にその粗朶を詰めて湖に設置し、それらを消波施設とするのです。使用する粗朶は霞ヶ浦周辺の里山の間伐などで得られたものをリサイクルしています。この粗朶消波施設は、石やコンクリートとは違い、波を完全に遮るのではなく、波の力をやわらげるのです。つまり、粗朶の中を水が通り抜けることができるのです。その結果、水のよどみやヘドロの堆積、砂の吸出し、深掘れといった石積み消波施設で起きていた弊害を大幅に低減することができます。そればかりでなく、粗朶には魚の産卵場所、避難場所といった機能があり、魚が生息しやすい環境も提供しているのです。
粗朶消波施設の内側のエリアにはアサザなどが植え付けられ、それらがしっかり根付くまで粗朶消波施設が守ります。浜地区では、学校ビオトープなどで育てられたアサザが植え付けられ、群落が復活しつつあります。そして、将来群落となったアサザなどが自然の消波施設の機能を果たすようになり、水辺の植生が復元された後は、不要となった粗朶消波施設は水中で放置されても朽ちて無くなります。自然環境に負荷を与えることのない素晴らしいシステムですね。

               粗朶消波施設1      粗朶消波施設2



飯島氏による講演・意見交換会
全員での昼食後は、アサザ基金代表の飯島博氏による講演会です。「保全生態学に基づいた霞ヶ浦再生プロジェクトの解説」をテーマにお話をいただきました。アサザプロジェクトのこと、プロジェクトの目標、学校ビオトープの役割、自然再生事業のあるべき姿、市民・国・自治体・企業・NPO・学校などあらゆる主体の参加による市民型公共事業など、さまざまなテーマを、深く、詳しく、しかも楽しく、分かりやすくお話しいただきました。飯島さんの話を聞いて、だいぶ考え方の変わった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
とてもためになる講義でした。最後に質疑応答を行い、終了です。
このあとの視察には、飯島さんにも同行いただき、各所で解説などをしていただきました。

               飯島博氏による講演1      飯島博氏による講演2



湖岸植生帯復元事業
午後は石岡市石川地区の湖岸植生帯復元事業地区の見学からスタートです。
ここは国土交通省がアサザプロジェクトの意見を取り入れ、湖岸植生帯復元の工事を行ったところです。造成を行った時には一面の土の地面でしたが、見事に植生が復活しています。植生帯の内側にはコンクリート護岸が残されていますが、湖岸にこれだけの植生帯があれば、湖水の水質浄化や生物の生息環境など、自然に近い機能が期待できそうです。写真の植生帯の向こう側に映っているのが粗朶消波施設です。

最後に参加者全員で記念撮影をしました。

     粗朶消波施設によって復元した湖岸植生帯の解説1    粗朶消波施設によって復元した湖岸植生帯の解説2    復元した湖岸植生帯をバックに全員で記念撮影



休耕田も、再生した田んぼも大切な生き物のビオトープ 「谷津田の見学」
今回のフィールド講座、最後のプログラムは石岡市東田中の谷津田再生地区の見学です。この谷津田は霞ヶ浦に流れ込む水源地の1つで、20年以上放置された田んぼを民間企業との協働により再生しようというものです。先日もその企業の社員や家族が田植えを行ったとのことでした。ここで収穫されるお米は酒米で、お酒が作られるのだそうです。稲がきれいに並んだ田んぼはとても美しく、まさに日本の原風景といった感じでした。農薬を使用していないからか、ヤゴ、ゲンゴロウといった昆虫や、アカガエル、ニホンアマガエル、ドジョウなど、たくさんの生物を見ることができました。アサザプロジェクトの目標は、「百年後にトキの舞う霞ヶ浦」。将来トキが戻ってきた時には、ここはきっとトキの良い餌場となるのでしょう。

     谷戸田の見学    谷戸田で悠々と泳ぐカエル    昔懐かしい谷戸田の風景



フィールド講座終了
谷津田の見学ですべてのプログラムが終了です。JR石岡駅にて全員解散しました。

参加者の皆さん、2日間おつかれさまでした。
皆さんにできるだけ多くのことを学んでいただこうと、たくさんのプログラムを組みました。日本を代表する自然再生事業であり、市民型公共事業であるアサザプロジェクトを題材にした今回のフィールド講座では、今後皆さんが活動する上で必要な知識や経験、自分の考える活動をどのように進めていくかのヒントなどがたくさん得られたのではないでしょうか。この経験を是非実践に生かしていってください。
人と自然の研究所は、今後も皆さんのためになる現場実習の場を提供して参ります。


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